Ⅲ 集団給食
- Q1 誤食時の具体的な対応方法を教えてください
- 誤食をして何らかのアレルギー症状が出た場合、はじめに下表に示した「緊急性が高いアレルギー症状があるか?」を確認します。それらの症状が一つでも当てはまる場合には、エピペン®をすぐに使用し、エピペン®がない場合には直ちに救急車を要請します。一方、緊急性が高いアレルギー症状がない場合には内服薬を飲ませて、安静にできる場所で少なくとも5分毎に症状を観察します。症状が悪化する場合や内服薬を飲ませて1時間以内に症状が改善しない場合には医療機関を受診してください。
表 緊急性が高いアレルギー症状
食物アレルギーの診療の手引き2020 P.25「症状出現時の対応」参照
食物アレルギー緊急時対応マニュアル参照 - Q2 エピペン®の副作用はありますか
- エピペン®にはアドレナリンという薬剤が含まれています。アドレナリンの作用には、心臓の動きを強くして血圧を上げる、血管を収縮して血圧を上げる、気管支を広げて呼吸器症状を軽減するなどがあります。そのためエピペン®使用により、血圧が上昇したり、動悸や脈が速くなったりすることがありますし、頭痛、手足の震え、吐き気などの副作用も報告されています。また針による切り傷などの有害事象の報告もあります。ただし、いずれの副作用もアドレナリンの本来の作用によるもので危険性はないため、誤食などをして緊急性の高い症状が出た場合には正しく速やかに使用することが大切です。
- Q3 重症児に対する給食対応の考え方を教えてください
- 重症児(微量で症状が誘発される児、誘発される症状が重篤な児等)に対して給食対応する場合、細心の注意が求められ現場の業務負担が増します。また重症児に事故が発生した時は重大事故に至る可能性が高まります。
このように重症児への集団給食対応は、注意・配慮の困難さと、それに伴う事故リスクの増大に繋がります。このため、重症児に対して安全な給食提供が困難な場合には、弁当対応を考慮し、保護者には給食対応のリスクを伝えて理解を促すことが必要です。
学校給食における食物アレルギー対応指針参照 - Q4 原因食物の完全除去対応(提供するかしないか)が望ましい理由を教えてください
- 集団給食で誤食事故やヒヤリハット事例が発生する原因には、食物アレルギーに関する情報不足、献立や材料搬入時の確認ミス、調理段階での原因食物の混入(コンタミネーション)、誤配膳等があります。現場の人員や設備等の許容範囲を超えた際にこれらの生じるリスクはさらに高くなります。例えば、原因食物が多種・多数にもかかわらず、調理員が1人で対応しなければならない場合、また、牛乳アレルギーの対応で、A君は完全除去、B君は飲用牛乳のみ除去、C君は牛乳20mLまで摂取可のように、対応が多段階にわたる場合などです。C君の場合は、さらに献立中の牛乳使用量を明確にする必要があり、持続可能な業務の限度を超えるものと考えられます。原因食物の完全除去対応(提供するかしないか)は、安全な調理作業を継続するための工夫であることを考えてみてください。まずは施設ごとに、将来にわたって安定して安全に提供できる給食対応範囲や方法(受け入れから提供まで)を検討することが大切です。
- Q5 給食での鶏卵解除の考え方を教えてください
- 鶏卵アレルギーでは、加熱調理した鶏卵は自由に食べられますが、生鶏卵の除去が必要な場合があります。また加熱鶏卵が食べられる方はマヨネーズも症状なく食べられることが多いです。学校等の集団給食では、鶏卵は加熱調理が原則となっています。このため生や半熟鶏卵のみ除去の鶏卵アレルギー児であれば、給食で提供する加熱調理された鶏卵料理やマヨネーズを家庭で食べている児童生徒は、学校等の給食において鶏卵製品を除去する必要はありません。
- Q6 給食での木の実(ナッツ)類除去の考え方を教えてください
- 木の実類は、それぞれの種類によってアレルギーの原因となるタンパク質が異なるので、木の実類一つ一つを摂取できるか診断する必要があります。木の実全種類を除去する必要は本来ありません。例えば、くるみアレルギーと申請がある児童生徒の献立から、アーモンドなどの木の実類全てを除く必要はありません。患児に症状の既往があり、かつ医師の診断によって、生活管理指導表に給食対応が必要と記載されている食物が除去の対象となります。
- Q7 注意喚起表示の考え方を教えてください
- 加工食品の注意喚起表示には、表示義務はないため、注意喚起表示の有無でその食品の摂取可否を判断することは基本的にはできません。「うちの子供は注意喚起表示の記載がある食品も食べることはできません」というような申請がある場合には、まずは注意喚起表示の解釈を確認してください。もし、注意喚起表示の解釈が適切であり、本当に注意喚起表示の記載のある食品を除去する必要があるという場合には、その児は、非常に重篤であると考えられ、集団給食を喫食することは困難であると考えます。
本文P.34 注意喚起表示参照
- Q8 アレルギー対応食は一般食と見た目を同じにした方がよいでしょうか
- 保育・教育施設等の給食では、患児の心理的な影響と給食の目的等に鑑みると、通常食と見た目や内容に違いの少ないものが望ましいと一見思われます。しかし現場では、外見が似ていることによって、取り違えや誤配が生じる原因になります。たとえば、原因食物が入った飲み物を子どもが勝手に取りかえて患児が飲んでしまい、症状が誘発された保育所での事例も報告されています。関係者相互で情報共有を確実に行い、安全が確保される場合にのみ考慮しましょう。
- Q9 給食提供時のチェック方法について教えてください
- 食品の検収や調理、受け渡し、配膳の工程ごとに、複数人による内容チェックが必要です。例えば検収時(加工食品で慣例使用されている製品でも原材料の変更がないか等)、調理時(使用前の材料、調理中のとりわけ、完成後のラップ・食器と献立表の照合)、受渡し・配膳時(対応食ごとのカード(食札)と献立表の照合)の目視・指差し、声出し確認が重要です。特に土日祝日や行事の際など、勤務体制が異なる状況下では誤配リスクが高まりますので、チェックを強化するように心がけましょう。