栄養食事指導のポイント

不必要な除去の確認

  • 不必要な食物除去や未摂取の食品がないか、摂取状況を確認する。
  • アレルゲンが含まれる食品に関する正しい情報を伝える。
  • 完全除去の場合でも調味料(醤油、味噌、油、ダシ など)が摂取可能かどうか、医師に確認する。

安全性の確保

  • アレルギー表示の見方を指導し、加工食品の購入時に原材料表示を確認する習慣をつけてもらう。
  • 生活の中での安全確保(兄弟との接触、取り違え、後片付けなど)について指導する。
  • 重症な場合は、周りの人の手や箸を介した混入や接触に留意し、専用の調理器具や食器を用意するように指導する。

原因食物別の栄養食事指導参照
加工食品のアレルギー表示 参照

食生活の評価・指導

  • 除去食物があっても、主食(ごはん、パン、麺など)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、きのこ、果物など)のバランスを考え、種々の食品を取り入れた食事をすることで、栄養状態の悪化を防ぐことができる。
  • ただし、牛乳アレルギーがある場合には、カルシウムの摂取が不足がちになるため、牛乳以外のカルシウムを多く含む食品から補う。

参考資料参照

  • 体重増加不良等の成長障害がある場合には、身長、体重、臨床検査値、食事記録などをもとに主治医に報告し対策を検討する。

“食べられる範囲”の具体的な指導

  • 食品によって含まれるタンパク質(アレルゲン)の量が違うことを知り、食べる時にタンパク質の量に注意ができるように指導する。
  • タンパク質は、加工や調理によって変化することがあり、同じタンパク質量であっても症状の出やすさが異なってくる場合があることを指導する。
  • タンパク質量や上記の症状の出やすさをふまえて、食べてよい食品(料理法や加工食品の選択)やその許容量を具体的に指導する。

原因食物別の栄養食事指導参照

保護者(患者)の不安への理解・支援

  • 患者あるいは保護者の抱える食生活に関する悩みを受け止め、その内容を整理し、解消するための情報提供や支援を行う。

患者の悩みの内容と対応例

  • いつまで食物除去をしなければならないのか先が見えない
    ⇒小児の鶏卵・牛乳・小麦・大豆アレルギーは3歳までに約50%、5-6歳までに約60-70%が治るため、定期的に負荷試験を受けることで解除を期待できることを伝える。
  • 食品表示に書かれている用語がわからない
    ⇒紛らわしい表示など用語の解説を行い、除去不要のものを説明する。

    加工食品のアレルギー表示 参照

  • 利用できる食品の選択肢が少ない
    ⇒市販のアレルギーに配慮された食品、入手方法を紹介する。
  • 献立のレパートリーが少ない
    ⇒主な除去食物に対応した主食、主菜、間食などのレシピを用意しておき、患者の除去状況に応じたレシピを紹介する。また、味付けなどの工夫点を伝える。
  • 外食が自由にできない
    ⇒アレルギーに配慮された料理を提供してくれる近隣の店の情報を収集しておき、その情報を提供する。ただし、重篤な患者の場合は外食の危険性を十分に説明する。
  • 周囲の理解を得られない
    ⇒本手引きなどを利用し、食物アレルギーの最新かつ正しい知識を周囲の方々にも理解してもらえるように促す。

コラム 食物アレルギー児の離乳食のすすめ方

  • 食物アレルギーでも、離乳食の開始や進行を遅らせる必要はない。
  • 離乳食は、医師より指示された原因食物を除去しながら、厚生労働省策定「授乳・離乳の支援ガイド」にもとづいて、通常通り開始し、進行する。
  • 初めての食物を与えるときは、患者の体調のよいときに、新鮮な食材を、充分に加熱し、少量から与える。平日の昼間に与えれば症状が出た場合に医師の診察を受けやすい。
  • 乳児期の原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が90%を占める。離乳食開始時に利用しやすい米、野菜類(大根、人参、カボチャ、サツマイモ など)が原因食物となることは少ない。
  • 保護者が“念のため”に摂取開始を遅らせている食物がないか、摂取している食物の種類を確認する。
  • 患者にかゆみを伴う湿疹がある場合は、医師の指導のもとで早期に湿疹の改善を目指し、離乳食を開始する。

2007年厚生労働省策定「授乳・離乳の支援ガイド」

集団給食での対応に不満がある
⇒保育所や学校との具体的なやり取りの内容を傾聴し、家庭とは異なる大量調理の特性などを伝え、保護者や患者に施設側の安全性重視の姿勢を理解してもらう。そのうえで、よりよい対応方法を共に考える。

“食べられる範囲” がうまく広げられない
⇒まずは子どもたちにとって除去していた食物は慣れない味であること、除去していた食物を食べ進めることに対する不安な気持ちがあることを受け止める。
 そのうえで、患者の好きな料理、好きな味付けを聞き出し、できるだけ抵抗なく除去していた食物を食べられるように子どもに合った調理方法を伝える。
 さらに、“食べられる範囲” を広げていくことのメリット(将来的に食べられる食品の選択肢が広がっていくことなど)を伝える。

問題解決への基本的な面接技法と支援の手法

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