準備編
社会的環境の整備
⾷物経⼝負荷試験を施⾏する医師に求められる条件
OFCでは患者に症状を誘発させるリスクを伴うため、下記の条件を満たした医師が実施すべきである。
- ⾷物アレルギー診療に関する知識・経験を有している。
- 患者ごとにOFCを⾏う⽬的を理解し、その適⽤および適切な⽅法を選択できる。
- 症状誘発時の対応が⼗分に⾏える。
- 負荷試験⾷を準備または説明できる。
実施施設の認定と保険診療
OFCは保険適応となっており、基準を満たした施設※において9歳未満の患者に、年2回に限り、1000点を算定できる(負荷試験⾷の費⽤含む)。⼊院ではDPC対象病院かどうか、基準を満たすかどうかで算定⽅法が異なる(表5)。
※⼩児⾷物経⼝負荷検査の施設基準
- ⼩児科を標榜している保険医療機関
- ⼩児⾷物アレルギーの診断及び治療の経験を10年以上有する⼩児科を担当する常勤の医師が1名以上配置されている。
- 急変時等の緊急事態に対応するための体制その他当該検査を⾏うための体制が整備されている。
実施医療機関の分類と役割
OFCを実施する医療機関を表6のように分類する。⾃施設でOFCの実施が難しい症例は、近隣の医療機関と病診連携し、早期にOFCを実施できるように配慮する。安易に除去を継続することは避ける。
Sakai et al. Asia Pac Allergy 2017;7:234-42
※OFCを実施している医療機関
⽇本⼩児科学会専⾨医研修プログラム基幹施設・連携施設におけるOFC実施状況は「⾷物アレルギー研究会」ホームページで検索できる。
安全対策および体制の整備
施設内の体制整備
OFCの実施には、症状出現時に迅速に対応できる体制が必須である。
- 専任の医師または看護師を配置することが望ましい。
- 症状出現時の対応についてスタッフが⼗分に理解する必要がある。
- 症状出現時の対応マニュアルを作成してあることが望ましい。
実施場所
施設の状況や患者のリスクに応じて、外来OFCまたは⼊院OFCを選択する。
薬剤・医療備品の準備
症状出現時の対応のための薬剤および医療備品の準備を⾏う。
病院給⾷の準備
- ⼊院で実施する場合には、⼊院中の⾷事提供による誤⾷・誤配膳に注意する。
- ⼊院時の除去⾷物の確認、調理⼯程の⼯夫が必要である。
- アレルギー症状出現頻度の⾼い原因⾷物をすべて使⽤していない定型のメニューを活⽤してもよい。
柳⽥紀之 他. ⽇⼩ア誌 2014;28:835-45
負荷試験⾷の準備
事前に医療機関で提供するのか、保護者が準備するのか⾃施設の⽅針を決める。
(1)医療機関で提供する場合
- 栄養管理室の協⼒が得られる場合には、レシピと調理⽅法・総負荷量を決めておくと定型化した負荷試験⾷を提供できる。
- 負荷試験⾷の情報(レシピなど)を患者や保護者に提供し、⾃宅でも摂取できるように⼯夫する。
- OFC⽤の⾷品粉末を使⽤すると簡便に実施できる。
Yanagida N et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2019;7:716-8.e6
(2)保護者が準備する場合
- 総負荷量・調理⽅法について⽂書を⽤いて説明する。
- 加熱など調理⽅法により抗原性の変化する負荷⾷物では、レシピと調理⽅法を定型化すると均⼀なOFCが実施できる。
- 加⼯⾷品を⽤いる場合には、製造⽇、販売地域の違いや原材料の規格変更など、タンパク質含有量が販売時期により異なることがあるため注意が必要である。
- 代表的な負荷⾷品には、鶏卵(卵をつなぎに使った料理、固ゆで卵⽩)、⽜乳(ヨーグルトや⽜乳)、⼩⻨(うどん、パン)、ピーナッツ・⽊の実類(ローストされているピーナッツ・ナッツそのもの、ピーナッツバター)などがある。
説明・同意
- OFCの具体的な⽅法、症状誘発リスクについて患者および保護者に説明し、⽂書で同意を得る。
- イラストなどを⽤いた説明⽂書を作成し、患者にもできるだけわかりやすいように説明する。
結果に影響する薬剤
- OFCの結果に影響すると考えられる薬剤は事前に⼀定期間中⽌する(表8)。
- 吸⼊ステロイド薬、点⿐薬、点眼薬、外⽤薬については、中⽌する必要はない。ただし、吸⼊β2受容体刺激薬および吸⼊ステロイド薬と吸⼊β2受容体刺激薬を合わせた配合剤およびβ2刺激薬の貼付剤は中⽌する。
- アレルギー疾患に対する⽣物学的製剤(オマリズマブなど)は症状誘発の閾値を上昇させる可能性があるため、結果の解釈には注意が必要である。
Crapo RO et al. Am J Respir Crit Care Med 2000;161:309-29
Bird JA et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2020;8:75-90
Bird JA et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2020;8:75-90