総論
定義
⾷物経⼝負荷試験(oral food challenge, OFC)はアレルギーが確定しているか疑われる⾷品を単回または複数回に分割して摂取させ、症状の有無を確認する検査である。
⾷物アレルギー診療ガイドライン2021(案)
目的
OFCの⽬的は、「⾷物アレルギーの確定診断(原因アレルゲンの同定)」、「安全摂取可能量の決定および耐性獲得の診断」の2つに分類される。
消化管アレルギーの負荷試験に関しては「新⽣児・乳児⾷物蛋⽩誘発胃腸症診療ガイドライン」を参照
適用
- 乳児を含めた⼩児〜成⼈において実施可能である。
- OFCにより得られる患者の利益が症状誘発のリスクより⼤きいと判断できる場合に実施する。
- 基礎疾患や合併するアレルギー疾患の症状がコントロールされている状態で実施する。
⼭⽥慎吾 他. ⽇⼩ア誌 2019;33:726-37
崎原徹裕 他. ⽇⼩ア誌 2019;33:106-16
Bird JA, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2020;8:75-90
崎原徹裕 他. ⽇⼩ア誌 2019;33:106-16
Bird JA, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2020;8:75-90
試験前のリスク評価
- OFCの実施前には、重篤な症状誘発のリスクを評価する。
- ⼀般的に重篤な症状を誘発しやすい要因を表2に⽰す。
- リスクが⾼い場合には、実施時期を延期する、総負荷量を減らす、加熱やマトリックス効果で低アレルゲン化できる負荷⾷品を選択するなどリスクの低減化を考慮する。
- 特にコントロール不良の気管⽀喘息は致死的なアナフィラキシーのリスクとなるため、⽇頃から適切な⻑期管理薬を使⽤してコントロール状態を良好に保つ
方法
- OFCにはオープン法とブラインド法がある。
- ⽇常診療においてはオープン法が⼀般的であるが、⼼因反応の関与が疑われる症例ではブラインド法で実施する。
総負荷量
- OFCで摂取する総量を総負荷量という。
- 総負荷量は少量、中等量、⽇常摂取量の3段階に分けられる(表3)。
- 少量の総負荷量は誤⾷などで混⼊する可能性がある量を想定し、⽇常摂取量は幼児〜学童の1回の⾷事量を想定し、ピーナッツ・⽊の実類については学校給⾷で提供される量を⽬安としている。
- ⽇常摂取量は耐性獲得の確認の⽬安の量である。
- 少量のOFCが陰性であれば中等量のOFCを実施し、中等量のOFCが陰性であれば⽇常摂取量のOFCを実施する。
- 中等量のOFCは、総負荷量をいくつかの段階に設定し、少ない総負荷量から段階的に増量し実施することもできる。
Yanagida et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2018;6:658-60.e10
⼆瓶真⼈ 他. ⽇⼩ア誌 2018;32:776-84
⼆瓶真⼈ 他. ⽇⼩ア誌 2019;33:129-38
⼆瓶真⼈ 他. ⽇⼩ア誌 2018;32:776-84
⼆瓶真⼈ 他. ⽇⼩ア誌 2019;33:129-38
摂取間隔および分割⽅法
安全性および患者への負担を考慮し、本⼿引きでは下記の⽅法を推奨する。
- 単回または2〜3回に分割する。
- 単回摂取は、安全摂取可能量がすでに明らかな場合や、少量を安全に摂取できるか確認する場合に⾏う。
- 分割して摂取する場合、摂取間隔は30分以上が望ましい(ただし、鶏卵は1時間程度が望ましい)。
- 摂取から⻑時間経ってからの症状誘発の既往がある症例では、摂取間隔の延⻑を考慮する。
- 最終摂取から2時間以上経過を観察する。
伊藤浩明 他. アレルギー 2008;57:1043-52
川⽥康介. ⽇⼩ア誌 2011;25:785-93
Yanagida N, et al. World Allergy Organ J 2016;9:12
Yanagida N, et al. Pediatr Allergy Immunol 2021;32:170-6
川⽥康介. ⽇⼩ア誌 2011;25:785-93
Yanagida N, et al. World Allergy Organ J 2016;9:12
Yanagida N, et al. Pediatr Allergy Immunol 2021;32:170-6
症状出現時の対応
- OFCによる誘発症状に対しては、臓器ごとに重症度を適切に判断し、速やかに治療を開始する。
- 経時的に症状の変化を確認し、重症度を再評価する。
- アナフィラキシーでは、早期のアドレナリンによる治療が死亡率や⼊院率の改善につながる。
即時型症状の臨床所⾒と重症度分類
- 重症度(グレード)は、臓器ごとに評価し、最も症状グレードの⾼い臓器症状により判定する。
- グレード1(軽症)の症状が複数あるのみではアナフィラキシーとは判断しない。
- グレード3(重症)の症状を含む複数臓器の症状、グレード2(中等症)の症状が複数ある場合はアナフィラキシーと診断する。
⾷物アレルギー診療ガイドライン2021(案)
重症度に基づいた症状に対する治療
- グレード2(中等症)以上の症状には原則として治療介⼊を考慮する。
- グレード3(重症)の症状に対してはアドレナリン筋⾁注射を⾏う。
- グレード2(中等症)でも①過去の重篤なアナフィラキシーの既往がある場合、②症状の進⾏が激烈な場合、③循環器症状を認める場合、④呼吸器症状で気管⽀拡張薬の吸⼊でも効果がない場合にはアドレナリンの投与を考慮する。
⾷物アレルギー診療ガイドライン2021(案)
⼆次医療機関への搬送
⼊院施設を有していない医療機関では、以下の場合には、⼗分な観察時間が必要となるため、⼊院施設のある別の医療機関への搬送を考慮する。
- グレード3(重症)またはアナフィラキシー症状を呈した場合
- グレード2(中等症)の症状が遷延した場合
- アドレナリンを投与した場合
結果判定
- OFCで出現した症状により、陽性、判定保留、陰性のいずれかを判断する。
- 判定保留、陰性の場合には⾃宅での摂取により症状の再現性を確認する(判定保留の80%、陰性の99%は⾃宅で摂取可能であることを確認できる)。
陽性の判断
- OFCで摂取から数時間以内に明らかな症状が誘発された場合に陽性と判定する。
- 症状出現に数時間以上要する場合もあることを考慮し、試験翌⽇まで症状の有無を観察するように指導し、その結果を加味して最終的に判定する。
判定保留の判断
- グレード1に相当するような軽微な症状や主観的な症状の場合には、判定保留として再度のOFCまたは、⾃宅での反復摂取で症状の再現性を加味して最終的に陽性か陰性か判定する。Miura T, et al. Pediatr Allergy Immunol 2018;29:66-7
陰性の判断
- OFCで症状が誘発されず、その後⾃宅での反復摂取により、確実に摂取できることを確認し、最終的に陰性と判定する。Yanagida N, et al. Pediatric Allergy Immunol 2021;32:170-6