Ⅱ 栄養食事指導

Q1 離乳食の進め方はどのようにしたらよいでしょうか
アレルギー予防のためにはアレルギーを起こしやすい食物(例えば鶏卵や牛乳など)は離乳食では与えずに1歳から始めると良いといわれていたこともあります。しかし最近の研究成果からは、少なくとも“食物アレルギーの発症を予防するために離乳食を遅らせる”ことは勧められていません。一方で“早めたほうが良い”かは、ピーナッツと鶏卵・牛乳に関しては“早く始めることのメリット”が報告されていますが、いまだ研究途上であり、最終的な結論には至っていません。一般論として乳児を抱える母親に“早く始めなさい”とは言えないと考えると良いでしょう。
本文P.16参照
Q2 授乳期の母親の除去は必要ですか。必要な場合、除去の範囲を教えてください
赤ちゃんが食物アレルギーと診断された場合、授乳中の母親も赤ちゃんの原因食物を除去しなければならないケースはあまり多くありません。もし、母親が原因食物を除去する場合でも、原因食物を含む加工食品は食べてよいことが多く、また、その除去期間が長くなることはありません。例えば、赤ちゃんが鶏卵アレルギーと診断されても、母親は鶏卵を除去する必要がないことがほとんどです。特に重症な鶏卵アレルギー児の母親であっても、鶏卵を少量含む菓子類やパンなどの加工品は食べてよいことが多いです。また母親の除去は、赤ちゃんが離乳食を開始する頃までとなることが多いので、母親の除去が長く続いている場合には主治医に除去の必要性を確認しましょう。
Q3 鶏卵アレルギーの場合に鶏肉、魚卵の除去は必要ですか
鶏卵アレルギーの人が、鶏肉および魚卵を除去する必要はありません。鶏卵アレルギーの原因となるたんぱく質と、鶏肉や魚卵に含まれるたんぱく質は異なるからです。ただし、鶏卵アレルギーの人がいくらなどの魚卵のアレルギーを合併している場合には、いくらなどの魚卵も除去することになります。鶏肉のアレルギーは頻度そのものがとても少ないです。
本文P.19「鶏卵アレルギー完全除去の場合の食事」参照
Q4 小麦アレルギーの場合にしょうゆの除去は必要ですか
一般的には、しょうゆの原材料には小麦を含んでいますが、極めて重症な方以外は、小麦アレルギーの人がしょうゆを除去する必要はありません。しょうゆを含む調味料(だしじょうゆ、ポン酢しょうゆ、すきやきのたれなど)も使用できます。それは、しょうゆが醸造される工程の中で、しょうゆに含まれる小麦のタンパク質のアレルゲン性が失われているからです。
本文P.26「小麦アレルギー完全除去の場合の食事」参照
Q5 甲殻類アレルギーの場合は、しらすなどの小魚の除去は必要ですか
えびやかになどの甲殻類アレルギーの人であっても、甲殻類をえさとして食べている、あるいは甲殻類が混じって捕獲されること(混獲)のあるしらすなどを除去しなければならないケースはほとんどありません。重症な甲殻類アレルギーの人でなければしらすなどの小魚を食べられることが多いです。
本文P.30「甲殻類、軟体類、貝類アレルギー」参照
Q6 卵殻カルシウム、乳化剤の除去は必要ですか
卵殻カルシウムは、卵の殻を粉に加工したものです。鶏卵アレルギーの原因となるタンパク質は無視できる程度であり、過度に危惧する必要はありません。また、乳化剤は、水と油の分離を防ぐ(乳化させる)ことを目的としたものです。乳化剤(乳由来)と表記されていなければ、牛乳アレルギーであっても除去の必要はありません。
本文P.34「紛らわしい表示」参照
Q7 牛乳アレルギー児のカルシウム摂取方法を教えてください
乳児は、人工栄養児に準じたアレルギー用ミルクの摂取で補充することができます。幼児で牛乳を使用しない食事では、カルシウムを食事摂取基準の半分程度しか摂取できません。不足の状態が続かないように、つとめてカルシウムが豊富な食物、あるいは牛乳摂取量程度(100〜200ml)のアレルギー用ミルクで継続的に補うことが望ましいです。食品摂取では、しらす干し、ししゃも、生揚げ、小松菜、干し桜えび、削りこんぶ、魚水煮缶詰などが常備できて比較的手間もかからず、食事に取り入れやすいものです。最近では、調味料や飲料など、カルシウムを添加した市販品もあります。
本文P.23「牛乳アレルギー完全除去の場合の食事」および参考資料「カルシウム110mgの目安」参照