原因食物別の栄養食事指導

鶏卵アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 鶏卵アレルギーは卵白のアレルゲン(オボムコイド、オボアルブミンなど)が主原因である。加熱卵黄(少量の卵白が付着するものの)は摂取可能な児が多い。
  • ただし、鶏卵による食物蛋白誘発胃腸炎患者は、卵白より卵黄で症状が誘発されることが報告されている。卵黄を摂取した数時間後に繰り返し嘔吐を認めるような場合にはこの病型である可能性を考慮する。
  • 卵白の主要な原因たんぱく質であるオボアルブミンは、容易に加熱変性するため、加熱温度や、加熱時間、調理方法によって、食べられる場合がある。逆に、加熱鶏卵が摂取可能でも、加熱が十分でない鶏卵や生鶏卵などでは症状がでる可能性があり、加工食品や卵料理の幅を広げる手順を具体的に指導する。
  • 鶏肉や魚卵は、鶏卵とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はない。
  • 加工食品の原材料である卵殻カルシウム(焼成・未焼成製品)は、ほとんど鶏卵たんぱく質を含まないため摂取することができる。
  • うずらの卵は、食品表示法において特定原材料「卵」の範囲に含まれる。
  • まれであるが、鳥由来のアレルゲンに経気道感作された後、交差反応による鶏卵アレルギー(bird-egg症候群)が報告されている。

<栄養食事指導のポイント>

  • 主菜としての鶏卵代替には、肉や魚、大豆・大豆製品などたんぱく質が豊富な食品を用いる。
  • 加工食品を適切に選択して、献立の幅を広げることを指導する。鶏卵不使用の魚・肉加工品(ちくわやウインナーなど)、マヨネーズ風の調味料の他、小麦や牛乳のアレルギーでなければ、鶏卵不使用の食パンやコーンフレークなども利用できる。
  • 鶏卵不使用のクッキーやビスケット、ゼリーなどの菓子類は、給食のおやつや外出時の携帯品として利用できる。また、鶏卵不使用のプレミックス粉の利用で、家庭で手軽におやつを作ることができる。
  • 鶏卵を材料として使用する天ぷらの衣やハンバーグのつなぎなどは、でんぷん類で代替可能である。家族全員で同じ料理が食べられるよう、食事準備の負担軽減を考慮する。
  • 症状が改善し、医師から鶏卵を摂取できる指示が出ても、鶏卵独特の臭い、色や味になじめず、実際の食生活に導入しにくい場合がある。カレーやケチャップ、マヨネーズ風調味料など、マスキング効果の高い食品を用いて、目標をもって開始すると、抵抗感の軽減につながることがある。
  • bird-egg症候群のアレルゲンはアルブミンであり、熱に不安定な性質をもつ。十分に加熱した鶏卵では症状が出ないことがある。重症度に応じて医師の指示に従う。
鶏卵アレルギー 完全除去の場合の食事
① 食べられないもの
鶏卵と鶏卵を含む加工食品、その他の鳥の卵 (うずらの卵 など)
★基本的に除去する必要のないもの︓鶏肉、魚卵
鶏卵を含む加工食品の例:

マヨネーズ、練り製品(かまぼこ、はんぺんなど)、肉類加工品(ハム、ウインナーなど)調理パン、菓子パン、鶏卵を使用している天ぷらやフライ、鶏卵をつなぎに利用しているハンバーグや肉団子、洋菓子類(クッキー、ケーキ、アイスクリームなど) など

②鶏卵が利用できない場合の調理の工夫
肉料理のつなぎ

片栗粉などのでんぷん、すりおろしたいもやれんこんをつなぎとして使う。

揚げものの衣

水と小麦粉や片栗粉などのでんぷんをといて衣として使う。

洋菓子の材料
  • プリンなどはゼラチンや寒天で固める。
  • ケーキなどは重曹やベーキングパウダーで膨らませる。
料理の彩り

カボチャやトウモロコシ、パプリカ、ターメリックなどの黄色の食材を使う。

③鶏卵の主な栄養素と代替栄養
鶏卵M玉1個(約50g)あたり

☆主食(ごはん、パン、麺など)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、果物など)のバランスに配慮する。

④鶏卵のアレルギー表示
1)容器包装された加工食品

鶏卵は容器包装された加工食品 に微量でも含まれている場合、必ず表示する義務がある。したがって、原材料表示欄に鶏卵に関する表記がなければ摂取できる。
〇卵の代替表記:たまご、鶏卵、あひる卵、うずら卵、タマゴ、玉子、エッグ
〇「卵殻カルシウム」は摂取することができる。

2)容器包装されていない料理や加工食品(飲食店、惣菜など)

容器包装されていない料理や加工食品には、どのような原材料であっても表示の義務はない。特に微量で発症したり、重篤な症状を起こしたりする可能性がある場合は販売者に直接確認して利用する。

鶏卵アレルギーの“食べられる範囲”の広げ方
  • 医師は、食物経口負荷試験で摂取できた鶏卵の量と調理法から、調理法による症状の出やすさを考慮して“食べられる範囲”を決定する。
  • 加工食品に含まれる鶏卵の量は一様ではないため、医師は、より安全性を配慮した範囲で摂取を許可する。
  • 医師と管理栄養士は、“食べられる範囲”の決定について、あらかじめ指導方針を共有しておくことが望ましい。

◆下記の食物経口負荷試験結果が陰性だった場合の指導◆

① 総負荷量が少量(加熱全卵1/32〜1/25個相当)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができるが、その他の加工品の摂取は難しい。

② 総負荷量が中等量(加熱全卵1/8〜1/2個相当)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
さらに、その摂取を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで以下の表を参考に他の加工品を試すことができる。

表5 加熱全卵1/8個が摂取可の場合に食べられる可能性の高い食品の量(例)
鶏卵のたんぱく質(アレルゲン)は加熱による変性が大きく、加熱時間、加熱温度、材料の鶏卵の量によって症状の出やすさが大きく異なるため、食べられる範囲を広げていく際には十分な注意を要する。

③ 総負荷量が日常摂取量(加熱全卵2/3〜1個相当)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
その摂取量を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで鶏卵を含む加工食品の摂取が可能となる。
ただし、生卵および加熱が十分でない鶏卵を含む食品(温泉卵、プリン、茶わん蒸し、オムレツ、かきたま汁など)の摂取の可否は医師の指示に従う。
さらに、摂取後の運動なども考慮して日常生活に支障がない量まで摂取が確認できれば、自宅以外(集団給食や外食など)の除去対応は不要となる。

牛乳アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 牛乳のアレルゲンにはカゼイン、β-ラクトグロブリンなどがある。カゼインは主要なアレルゲンで、加熱によるアレルゲン性の変化を受けにくい。β-ラクトグロブリンは加熱によって反応性が低下する。
  • 牛肉は、牛乳とアレルゲンが異なるため、基本的に除去する必要はない。
  • 牛乳以外のやぎ乳や羊乳などは、アレルギー表示の範囲外であるが、牛乳と強い交差抗原性があり、使用できない。
  • アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)は、牛乳たんぱく質を酵素分解して、分子量を小さくした「加水分解乳」と、アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけた「アミノ酸乳」、大豆たんぱくを用いた調製粉末大豆乳がある。加水分解乳は、最大分子量の小さいものほどアレルゲンの酵素分解が進んでおり、症状が出にくい。アミノ酸乳は、脂質が少なく、通常の調乳条件では高浸透圧のため下痢を来しやすい。アレルギー用ミルクの選択は医師の指示に従う。
  • 新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症(新生児・乳児消化管アレルギー)患者や重症な牛乳アレルギー患者は、加水分解乳で症状が出る可能性がある。
  • ペプチドミルクは、たんぱく質の酵素分解が不十分でアレルゲンが残存しており、牛乳アレルギー児には使用できない。
  • 加工食品の原材料には、「乳」の文字をもつ紛らわしい表記が多く、十分な理解が必要である。
  • 乳糖には、ごく微量(数μg/g)のたんぱく質が含まれる場合があるが、加工食品中の原材料レベルでの除去が必要な場合はまれである。摂取可否については医師に確認する。

<栄養食事指導のポイント>

  • 牛乳・乳製品の除去でカルシウム不足に陥りやすい。他の食品での補充を指導する。
  • アレルギー用ミルクは、母乳代替に加えて、カルシウム補給に利用できる。特有のアミノ酸臭があり、月齢が進むと飲みづらいことがある。果物ピューレやココアなどで風味をつけたり、ダシや豆乳の味を生かした料理に利用するなどの工夫をする。
  • 飲用乳の代替に豆乳を用いる場合には、牛乳と比較して、カルシウム含有量が少ないことに留意する。
  • 乳製品の代替に、豆乳で作られたヨーグルトやアイスクリーム、生クリームなどが市販されている。

表6 ミルクアレルゲン除去食品(アレルギー用ミルク)

食物アレルギー診療ガイドライン2021(日本小児アレルギー学会)から引用改変
用語解説
アレルゲン性本手引の中では、アレルゲンがIgE抗体に結合し、アレルギー症状を起こす能力を指す。
牛乳アレルギー 完全除去の場合の食事
①食べられないもの
牛乳と牛乳を含む加工食品
★基本的に除去する必要のないもの︓ 牛肉
牛乳を含む加工食品の例︓

ヨーグルト、チーズ、バター、生クリーム、全粉乳、 脱脂粉乳、一般の調製粉乳、れん乳、乳酸菌飲料、はっ酵乳、アイスクリーム、パン、カレーやシチューのルウ、肉類加工品(ハム、ウインナーなど)洋菓子類(チョコレートなど)、調味料の一部 など

②牛乳が利用できない場合の調理の工夫
●ホワイトソースなどのクリーム系の料理
  • じゃがいもをすりおろしたり、コーンクリーム缶を利用する。
  • 植物油や乳不使用マーガリン、小麦粉や米粉、豆乳でルウを作る。
  • 市販の乳不使用のルウを利用する。
●洋菓子の材料
  • 豆乳やココナッツミルク、アレルギー用ミルクを利用する。
  • 豆乳から作られたホイップクリームを利用する。
③牛乳の主な栄養素と代替栄養
普通牛乳100mLあたり


☆主食(ごはん、パン、麺など)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、果物など)のバランスに配慮する。

④ 牛乳のアレルギー表示
1)容器包装された加工食品

牛乳は容器包装された加工食品に微量でも含まれている場合、必ず表示する義務がある。したがって、原材料表示欄に牛乳に関する表記がなければ摂取できる。

〇乳の代替表記:ミルク、バター、バターオイル、チーズ、アイスクリーム
〇「乳酸菌」「乳酸カルシウム」「乳酸ナトリウム」「乳化剤(一部乳由来あり)」
「カカオバター」「ココナッツミルク」などは 牛乳とは関係なく、摂取することができる。
2)容器包装されていない料理や加工食品(飲食店、惣菜など)

容器包装されていない料理や加工食品には、どのような原材料であっても表示の義務はない。特に微量で発症したり、重篤な症状を起こしたりする可能性がある場合は販売者に直接確認して利用する。

牛乳アレルギーの“食べられる範囲”の広げ方
  • 牛乳や乳製品は、乳酸発酵や加熱による症状の出やすさの違いが少ないため、たんぱく質量を基にした“食べられる範囲”の判断が概ね可能である。
  • 食品によって含まれるたんぱく質量が異なる。解除指導では、たんぱく質量の少ないバターなどの食品から導入し、たんぱく質量の多いチーズは、他の乳製品の摂取が可能となってから導入することが望ましい。

◆下記の食物経口負荷試験結果が陰性だった場合の指導◆

① 総負荷量が少量(牛乳1〜3mL)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができるが、その他の加工品の摂取は難しい。

② 総負荷量が中等量(牛乳10~50mL)

食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
さらに、その摂取を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで以下の表を参考に他の加工品を試すことができる。

表7 牛乳50mLに相当するたんぱく質を含む乳製品(例)

③ 総負荷量が日常摂取量(牛乳100〜200mL)

食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
その摂取量を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで牛乳を含む加工食品の摂取が可能となる。
さらに、摂取後の運動なども考慮して日常生活に支障がない量まで摂取が確認できれば、自宅以外(集団給食や外食など)の除去対応は不要となる。

小麦アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 小麦の主要なアレルゲンに、グリアジンやグルテニンなどがある。
  • 大麦やライ麦などの麦類と小麦は、交差抗原性が知られている。しかしすべての麦類の除去が必要となることは少ない。
  • 醤油の原材料に利用される小麦は、醸造過程でアレルゲンが消失する。したがって原材料に小麦の表示があっても、基本的に醤油を除去する必要はない。
  • 麦茶は大麦が原材料で、たんぱく質含有量はごく微量であるため、除去が必要なことはまれである。
  • 米や他の雑穀類(ひえ、あわ、きび、たかきびなど)は、摂取することができる。
  • 食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として最も頻度が高い。
  • α-アミラーゼインヒビターは、小麦粉の吸入により職業性喘息を起こすbakerʼs asthmaの原因となる。これらは加工によるアレルゲン性の変化が少ない。
  • グルテンフリー表示は欧米の基準であり、我が国のアレルギー表示の基準とは異なる。このため重症な小麦アレルギー患者は、グルテンフリー表示の製品で症状が誘発される可能性がある。一方で農林水産省が認証する米粉を対象とした「ノングルテン」表示は、1ppm未満基準であり、通常摂取が可能である。

<栄養食事指導のポイント>

  • 主食は、米などを中心に、小麦以外の食品をバランスよく摂取すれば、栄養素不足は生じにくい。
  • 小麦の代替品に米や雑穀、とうもろこし粉を使ったパン・めん類などが市販されている。小麦以外の粉やでんぷんを料理に取り入れることで、料理のレパートリーを広げることができる。
  • 小売店で販売される「米粉パン」は、小麦アレルゲンであるグルテンを使用していることがある。食品表示や製造者に必ず確認する。
  • 給食では、押し麦や米粒麦、もち麦などの大麦加工品を使用することがある。大麦摂取の可否は、個別に確認の上で給食対応を決定する。
小麦アレルギー 完全除去の場合の食事
①食べられないもの
小麦と小麦を含む加工食品
★基本的に除去する必要のないもの︓ 醤油、穀物酢
小麦粉:

薄力粉、中力粉、強力粉、デュラムセモリナ小麦

小麦を含む加工食品の例:

パン、うどん、マカロニ、スパゲティ、中華麺、 麩、餃子や春巻の皮、お好み焼き、たこ焼き、天ぷら、とんかつなどの揚げもの、フライ、シチューやカレーのルゥ、洋菓子類(ケーキなど)、和菓子(饅頭など)

*大麦の摂取可否は主治医の指示に従う。

②小麦が利用できない場合の調理の工夫
●ルウ

米粉や片栗粉などのでんぷん、すりおろしたいもなどで代用する。

●揚げものの衣

コーンフレーク、米粉パンのパン粉や砕いた春雨で代用する。

●パンやケーキの生地

米粉や雑穀粉、大豆粉、いも、おからなどを生地として代用する。市販の米パンを利用することもできる。

●麺

市販の米麺や雑穀麺を利用する。

③小麦の主な栄養素と代替栄養
食パン6枚切1枚あたり


☆主食(ごはん、米麺、米パンなど)、主菜(肉、魚、大豆製品など)、副菜(野菜、芋類、果物など)のバランスに配慮する。

④小麦のアレルギー表示
1)容器包装された加工食品

小麦は容器包装された加工食品に微量でも含まれている場合、必ず表示する義務がある。したがって、原材料表示欄に小麦に関する表記がなければ摂取できる。

〇小麦の代替表記︓こむぎ、コムギ
〇「麦芽糖」「麦芽(一部小麦由来あり)」は除去する必要はない
2)容器包装されていない料理や加工食品(飲食店、惣菜など)

容器包装されていない料理や加工食品には、どのような原材料であっても表示の義務はない。特に微量で発症したり、重篤な症状を起こしたりする可能性がある場合は販売者に直接確認して利用する。

小麦アレルギーの“食べられる範囲”の広げ方
  • 小麦製品は、加熱や加工に伴う症状の出やすさの違いが少ないため、たんぱく質量を基にした“食べられる範囲”の判断が概ね可能である。

◆下記の食物経口負荷試験結果が陰性だった場合の指導◆

① 総負荷量が少量(うどん(ゆで) 1〜3g)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができるが、その他の加工品の摂取は難しい。

② 総負荷量が中等量(うどん(ゆで) 10〜50g)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
さらに、その摂取を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで以下の表を参考に他の加工品を試すことができる。

表8 うどん(ゆで) 50gに相当するたんぱく質を含む小麦製品(例)

③ 総負荷量が日常摂取量(うどん(ゆで) 100~200g、6枚切り食パン1/2~1枚)

⇒食物経口負荷試験で摂取したものと同じ食品を食物経口負荷試験で摂取した量まで食べることができる。
その摂取量を数回繰り返して問題がみられなければ、医師の指示のもとで小麦を含む加工食品の摂取が可能となる。
さらに、摂取後の運動なども考慮して日常生活に支障がない量まで摂取が確認できれば、自宅以外(集団給食や外食など)の除去対応は不要となる。

木の実(ナッツ)類アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

    • 木の実(ナッツ)類(クルミ、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ココナッツなど)は、ひとくくりにして除去をする必要はない。個別に症状の有無を確認する。
    • ただし、カシューナッツとピスタチオ、クルミとペカンナッツの間には強い交差抗原性がある。どちらかにアレルギーがあれば、両者を除去する必要がある。
    • クルミ、カシューナッツはアナフィラキシーなど重篤な症状のリスクが高く注意が必要である。
    • クルミは特定原材料に指定されている。包装された加工食品は、原材料表示で含有の有無を確認できる。
    • アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツはアレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。
    • 他のナッツ類はアレルギー表示の対象外である。

<栄養食事指導のポイント>

  • アーモンドやココナッツなどは洋菓子類の粉体材料(パウダー)として使用されることが多い。製品の外見だけではわかりにくい。特に店頭販売や外食では、必ず原材料の確認を行うことが必要である。

落花生(ピーナッツ)アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • ピーナッツは豆類であり、木の実(ナッツ)類とまとめて除去する必要はない。食物経口負荷試験などによって個々に症状の有無を確認する。
  • ローストする(炒る)ことでアレルゲン性が高まる。
  • ピーナッツオイルを含めた除去が必要である。
  • 特定原材料に指定されている。包装された加工食品は、原材料表示で含有の有無を確認できる。

<栄養食事指導のポイント>

  • 沖縄のジーマーミ(落花生)豆腐、佃煮や和菓子の他、カレールーなどの調味料、スナック菓子などの隠し味などに使用されることがある。

魚卵アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 乳幼児期では初めてイクラを摂取して症状が誘発される場合がある。
  • 魚卵間での交差抗原性を示す例は少なく、魚卵類(イクラ、タラコ、シシャモの卵、ワカサギの卵、カズノコ、とび子など)は、ひとくくりにして除去をする必要はない。
  • イクラは、アレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。

果物、野菜アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 果物アレルギーの原因は、キウイ、バナナ、モモ、リンゴ、サクランボの頻度が高い。
    今井孝成, 杉崎千鶴子, 海老澤元宏. アレルギー 2020;69:701-5
  • 特定の生の果物や野菜を摂取したときに、速やかに口の中や喉の痒みなど(OAS)を感じ、それ以上の症状は誘発されないことがある。この中で、特定の花粉との交差反応性があるものを特に花粉-果物アレルギー症候群(PFAS)という。
  • PFASの原因となる野菜や果物の多くは、特定の花粉と交差抗原性*がある。主なものに、カバノキ科(ハンノキ・シラカンバなど)花粉とバラ科果物(リンゴ、モモ、スモモ、サクランボ、西洋ナシなど)、キク科(ブタクサなど)花粉とウリ科果物・野菜(メロン、スイカ、キュウリなど)がある。
  • PFASの多くは、加熱調理した野菜や果物は摂取可能である。違和感を感じたら摂取を中止することで症状がおさまるので、厳密な除去は必要でないことが多い。
  • 果物アレルギーがすべてOASの病型を示すとは限らず、微量でアナフィラキシーを呈することもある。

<栄養食事指導のポイント>

  • 食べられる野菜や果物、イモなどで代替することで、微量栄養素や食物繊維などの栄養素が摂取できる。
  • PFASの給食対応では、生の果物や野菜のみ提供を中止し、ジャム、ケチャップ、ソースなどの加工品や調味料、加熱調理したものの除去は不必要なことが多い。保護者・本人の食生活状況を十分聞き取ったうえで、安全確保ができる範囲を提示する。
  • 微量でアナフィラキシーを呈する場合は、加熱調理した果物・野菜を含めた除去が必要である。
略語解説
OASoral allergy syndrome
PFASpollen-food allergy syndrome

甲殻類、軟体類、貝類アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 甲殻類(特にエビ)は食物依存性運動誘発アナフィラキシーの原因食物として頻度が高い。
  • 主要なアレルゲンはトロポミオシンで、熱や消化酵素による変化を受けにくい。
  • トロポミオシンをもつエビ・カニなどの甲殻類間や、イカとタコなどの軟体類間、貝類間に交差抗原性*があ
    る。エビアレルギー患者の65%は、カニにも症状を示すが、甲殻類と軟体類(イカ、タコなど)、貝類(ホタテなど)の交差反応性は20%程度である。

  • 甲殻類、軟体類、貝類をひとくくりにして除去をする必要はない。血液検査、食物経口負荷試験などで個々に症状の有無を確認する必要がある。
  • エビ・カニは特定原材料に指定されている。包装された加工食品は、原材料表示で含有の有無を確認できる。他はイカとあわびのみ、アレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。

<栄養食事指導のポイント>

  • 調味料に含まれる甲殻類のエキス成分や、スープ、えびせんべいなどの加工品は、個人によって食べられる範囲が異なる。摂取歴を詳しく確認後、主治医と相談する。

魚アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 魚類の主要アレルゲンは、パルブアルブミンとコラーゲンである。パルブアルブミンは、熱や消化酵素による変化が少ないが、高温、高圧処理によって反応性が低下する。
  • 魚は魚種間で交差抗原性*があるが、すべての魚の除去が必要とは限らない。このため、問診や食物経口負荷試験で摂取可能な魚を見つけることが望ましい。
  • 魚は、鮮度が低下すると魚肉中にヒスタミンが作られ、かゆみ、じんましんなどの症状をもたらすことがある。これは食物不耐症であり、食物アレルギーとは異なる病態で、区別して考える。
  • 小児はまれであるが、魚に寄生したアニサキスが原因のアレルギーが報告されている。
  • 青魚、赤身魚など、魚皮や身の色などの区別による除去には根拠がない。
  • かつお、いりこなどのダシの除去は、不必要なことが多い。
  • さけ、さばは、アレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。

<栄養食事指導のポイント>

  • 肉類や大豆・大豆製品を用いることで、たんぱく質の代替ができる。
  • 魚缶詰は、加圧加熱殺菌処理のためにアレルゲン性が低下しており、多くの場合に摂取可能である。
  • 魚全般の除去が続く場合は、ビタミンD不足のリスクが高くなる。卵黄、きくらげ、干ししいたけ、アレルギー用ミルクなどで補うことが望ましい。
  • 魚のダシを除去する必要がある場合は、しいたけ、昆布、肉などのダシを利用する。

大豆アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 大豆アレルギーで、他の豆類の除去が必要なことは非常に少ない。このため豆類をひとくくりに除去する必要はない。
  • 醤油や味噌は、醸造過程で大豆アレルゲンの大部分が分解される。
  • 納豆も発酵によりアレルゲン性の低下が期待できる。
  • 大豆油は症状なく摂取できることが多い。
  • PFASでは、豆腐が摂取可能であっても豆乳のみ症状が誘発されることがある。
  • 納豆による遅発型アナフィラキシー(摂取後5時間から半日後に発症)が報告されている。
  • 大豆はアレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。

<栄養食事指導のポイント>

  • 大豆たんぱくやたんぱく加水分解物など、大豆を含む原材料や食品添加物は多岐にわたるため、必ず加工食品の表示の確認を行う。
  • 醤油や味噌は摂取可能なことが多い。調味料が使用できることで家庭料理や給食の負担が軽減する。
  • 食物経口負荷試験などの結果から、医師の指示で大豆の醤油や味噌を除去する必要がある場合には、米や雑穀原料の調味料で代替できる。

そばアレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • そば殻を吸い込むことで、喘息症状を誘発する場合がある。
  • そばアレルゲンは、水に溶けやすく熱に強い性質がある。このため、そばと同じ釜でゆでたうどんなどは、そばのコンタミネーション(混入)が生じうる。
  • 特定原材料に指定されている。包装された加工食品は、原材料表示で含有の有無を確認できる。

<栄養食事指導のポイント>

  • ガレットやそばボーロなどの菓子類では、他の粉類とそば粉を混ぜて材料に使われる。原材料の確認を十分に行う。
  • そばを扱う飲食店での外食は控える。

ゴマアレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 他の木の実(ナッツ)類、落花生(ピーナッツ)などとひとくくりにして除去をする必要はない。
  • ゴマ油は使用可能な場合が多い。除去の必要性は主治医に相談する。
  • ゴマは、アレルギー表示の推奨品目である。推奨品目は複合原材料等、微量に含まれる旨の表示がされない場合があることに留意する。

<栄養食事指導のポイント>

  • 粒ゴマよりもすりゴマの形態のほうが症状が出やすい。ごまだれなどの調味料に注意する。

肉アレルギー

<食品の特徴と除去の考え方>

  • 肉アレルギーの患者は少なく、全ての獣肉(牛肉、豚肉、鶏肉など)の除去が必要になることは極めてまれである。
  • 肉アレルギーがあっても肉エキス(ダシ)は食べられる場合が多い。
  • まれであるが、マダニの咬傷(こうしょう)によるマダニ由来の成分への感作で発症する牛肉・豚肉アレルギー(α-Gal症候群)、ネコアレルゲンの経気道的な感作により発症する豚肉・牛肉アレルギー(pork- cat症候群)が報告されている。いずれも交差反応によるものである。
  • pork-cat症候群のアレルゲンはアルブミンであり、熱に不安定な性質をもつ。このため十分に加熱した豚肉では症状が出ないことがある。重症度に応じて医師の指示に従う。

<栄養食事指導のポイント>

  • 魚類や大豆製品などを用いることで、たんぱく質の代替は可能である。
  • 全ての肉類を除去する場合には、ヘム鉄の摂取不足による鉄欠乏を生じないよう、鉄を多く含む食品の継続的な摂取をすすめる。