臨床分類・疫学

Q1 食物アレルギーにはどのようなタイプがありますか?

① 新生児・乳児消化管アレルギー

新生児・乳児期に発症する非IgE依存性の食物アレルギーで、人工栄養児に牛乳で発症する消化管症状(血便、嘔吐、下痢など)を主症状とすることが多いです。特異的IgE抗体は陰性であることが多く、体重増加不良や発熱などの症状のみの場合もあり、他疾患などの鑑別も必要となります。牛乳によるものは予後に関しては良好と考えられており、多くは2歳までに治ります。

② 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎

小児の食物アレルギーの多くは乳児アトピー性皮膚炎に合併して発症します。湿疹の増悪に関与している場合や、原因食物の摂取によってアレルギー症状を合併することもあります。また慢性の下痢や低タンパク血症を合併している場合もあるので注意が必要です。
ただし、すべての乳児アトピー性皮膚炎に食物が関与しているわけではなく、最終的な診断には除去負荷試験が必要です。

③ 即時型症状

即時型症状は原因食物摂取後、通常2時間以内に出現するアレルギー反応のことを示し、乳児から成人まですべての年齢で起こりえます。その症状は蕁麻疹、持続する咳、喘鳴、嘔吐などやアナフィラキシーショックに進行するものまで様々です(→Q4)。また、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎から即時型症状を来すタイプへ移行をすることもあります。乳児期発症に比べ、成人発症の食物アレルギーは自然に耐性を獲得獲得していく可能性は少ないと言われています。

④ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー

ある特定の食物摂取後に、運動負荷が加わることによってアナフィラキシー症状が誘発され、食物摂取のみ あるいは 運動のみでは症状が出現しません。
好発年齢は中学・高校生から青年期で、幼児期では学童期に比べるとまれにしか認められません。原因を特定し、摂取後2~4時間は運動を行わないことが重要です。

⑤ 口腔アレルギー症候群

果物や野菜に対するアレルギーに多い病型で、食後数分以内に口唇・口腔内(口の中、のどなど)の症状(ヒリヒリする、イガイガする、腫れぼったいなど)が出現します。多くは粘膜の症状だけで回復に向かいますが、稀にアナフィラキシーに至ることもあります。

さらに詳しく「臨床系分類」

Q2 食物アレルギーの原因としては、どのような食べ物が多いですか?
日本の即時型食物アレルギーの3大原因食物は鶏卵、牛乳、小麦で、この3つの原因食物だけで全体の約7割を占めます。
また、年齢毎に新規発症の原因食物を見ると、0歳では3大原因食物が上位を占めますが、年齢が上がるにつれて、寛解が得られ、これらの割合は低下します。学童期から成人になると甲殻類、果物、エビ、ソバの割合が高くなるなど、成長に伴い変化していきます。また、近年ナッツ類の需要増加に伴い、クルミなどのナッツアレルギーの増加が指摘されています。
即時型以外の食物アレルギーでは、新生児・乳児消化管アレルギーは牛乳(調整粉乳)、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは小麦と甲殻類、口腔アレルギー症候群に関しては果物・野菜が原因食物として多いです。 さらに詳しく「疫学」
Q3 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の診断は、どのように進めれば良いですか?
食物アレルギーをもつ乳児の多くにアトピー性皮膚炎が合併しますが、そのすべてに食物アレルギーが関係しているわけではありません。
まず、湿疹に対してはスキンケア指導やステロイド外用療法などで湿疹の寛解を維持できるように治療します。通常の治療でも寛解を維持できない場合、血液検査や皮膚プリックテストで感作の有無を確認し、感作がある場合には疑わしい食品の除去試験や負荷試験を検討します。
通常のスキンケアとステロイド外用療法にて湿疹が改善しない、繰り返す症例、多抗原(3抗原以上)の食物抗原が陽性の症例、食物経口負荷試験が必要な症例については専門医に紹介してください。 さらに詳しく「食物アレルギー診断のフローチャート(食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎)」
Q4 食物アレルギーは予防できますか?
食物の早期摂取による食物アレルギーの予防効果について、2017年に日本小児アレルギー学会より「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」が発表されました。
この提言では、アトピー性皮膚炎を持つ乳児を対象に、乳児湿疹の治療と生後6か月からの微量の鶏卵摂取を開始することを推奨しています。ただし、すでに鶏卵アレルギーになっている乳児では摂取によってアレルギー症状がおきる危険も伴うため、必ず医師の指導の下に摂取を開始する必要があります。
また、アトピー性皮膚炎を発症していない乳児は、この提言にそって進める必要はなく、「授乳・離乳の支援ガイド」を参考に鶏卵を摂取することが勧められます。
妊娠および授乳中の食生活の工夫で子どもの食物アレルギーが予防できると立証されているものはなく、母親の食物除去は推奨されていません。