各種検査の特徴と適応

一般血液検査

  • 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の経過中や除去食物の多い患者に、末梢血好酸球数の増加、鉄欠乏性貧血、肝機能障害、低蛋白血症、電解質異常がみられることがあるので、必要に応じて一般検査を行う。

抗原特異的IgE抗体検査

  • 抗原特異的IgE抗体陽性(=感作されていることを示す)と食物アレルギー症状が出現することとは必ずしも一致しないことを念頭におくべきである。
  • 食物-食物、食物-環境抗原間での交差抗原性の理解が重要である。
    例)甲殻類-軟体類、花粉-果物
  • 抗原特異的IgE抗体の測定として本邦では半定量性のあるイムノキャップ®、アラスタット3g Allergy®、オリトンIgE®が行われている。
  • アラスタット3g Allergy®によるIgE抗体価とイムノキャップ®の結果(数値)は同一検体を測定しても一致するとは限らない。特に鶏卵では測定値が大きく異なる。
    長尾みづほ. 日本小児アレルギー学会誌2013; 27: 170. Sato S, et al. Allergol Int 2017; 66: 296-301.
  • 我が国における抗原特異的IgE抗体価(卵白・オボムコイド、牛乳、小麦・ω-5グリアジン、大豆、ピーナッツ、ソバ、イクラ)による食物経口負荷試験のプロバビリティー (症状誘発の可能性) が報告されている。主にイムノキャップ®によるものだが、アラスタット3g Allergy®によるIgE抗体価による報告もある。
    Komata T, et al. J Allergy Clin Immunol 2007; 119: 1272-4.
    Komata T, et al. Alleregol Int 2009; 58: 599-603.
    Ebisawa M. Int Arch Allergy Immunol 2012; 158: 71.
    Ebisawa M. J Allergy Clin Immunol Pract 2015; 3: 131-2.
    Yanagida N, et al. J Allergy Clin Immunol Pract 2017 in press
    Furuya K, et al. Allergy 2016; 71: 1435-43.
    Sato S, et al. Allergol Int 2017; 66: 296-301.
  • アレルゲンのコンポーネントに対するIgE抗体価(オボムコイド、ω-5グリアジン、Ara h 2など)を用いることで食物アレルギーの診断精度は高くなる。
  • カバノキ科花粉感作に伴う大豆アレルギーではGly m 4 (PR-10)が診断に有用である。

(イメージ図)

図3 プロバビリティカーブ(イムノキャップ®値と症状誘発の可能性)

プロバビリティカーブの読み方

牛乳のIgE抗体価3.0 kUA/Lの場合、症状を誘発する可能性は1歳未満の児では約90%、1歳児では約50%、2歳以上の児では約30%である。しかしあくまでも確率論であることに留意する。

皮膚テスト

  • 皮膚プリックテストは抗原特異的IgE抗体検査と同様に診断感度は高いが、特異度は低い。
    Sampson HA. J Allergy Clin Immunol 1999; 103: 981-9
  • 抗原特異的IgE抗体検査で検出できない乳児食物アレルギーの原因抗原の早期診断において、皮膚プリックテストは特に有用である。
    緒方美佳 他. アレルギー 2008; 57: 843-52. (鶏卵), アレルギー 2010; 59: 839-46. (牛乳)
  • 口腔アレルギー症候群においてはprick-to-prick test(原因食物そのものを用いて皮膚プリックテストを行うこと。たとえば果物をプリック針で刺してから皮膚に適用する。)の有用性が高い。
    Sicherer SH. Pediatrics 2003; 111: 1609-16
  • 皮内テストはショックの危険性や偽陽性率が高く通常行わない。

食物除去試験

  • 乳児アトピー性皮膚炎で適切な治療を行っているにもかかわらず湿疹の寛解を維持できない場合には、特異的IgE抗体検査や皮膚プリックテストで感作の有無を確認する。感作があり、疑わしい原因食物を1週間程度完全除去する。
  • 食物除去試験により湿疹が改善された場合、診断を確定するために食物経口負荷試験を行う。
  • 母乳栄養や混合栄養の場合、一部の症例では母親の食事内容が症状に関連していることもある。このような場合、母親の食事内容からの原因食物の除去が必要となる場合がある。母親が原因食物を摂取した後の授乳により児に重篤な症状になることは少なく、母親は加工品程度の摂取はできることが多い。母親の食物除去は必要最小限とし、短期間で解除できることが多いので適時解除の可能性を検討する。

抗原特異的IgGとIgG4抗体検査に関する注意点

  1. 特異的IgG (IgG4)抗体は臨床症状のない多くの患者で検出され、対照研究に基づいた食物アレルギーの診断的価値は報告されていない。
    Stapel SO, et al. Allergy 2008; 63: 793-6.
  2. 血清IgG4抗体価測定は特異抗体の存在を確認するだけであり、食物アレルギーの診断はできない。
    Bock SA, et al. J Allergy Clin Immunol 2010; 125: 1410

用語

イムノキャップ®抗原特異的IgE抗体を測定する方法の一つでセルロースのスポンジにアレルゲンを吸着させる方法。プロバビリティー(症状誘発の可能性)はイムノキャップ®に基づく場合が多い。
アラスタット3g Allergy®抗原特異的IgE抗体を測定する方法の一つで液相にあるストレプトアビジン結合ビーズにアレルゲンを吸着させる方法。
オリトンIgE®抗原特異的IgE抗体を測定する方法の一つで多孔性ガラスフィルターにアレルゲンを吸着させる方法。
アレルゲンコンポーネントアレルゲンを構成する個々のタンパク質成分。