症状出現時の対応
アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現し、死に至ることもある。重症のアナフィラキシーは、致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある。
アナフィラキシーガイドライン2022
症状出現時の対応
- OFCによる誘発症状に対しては、臓器ごとに重症度を適切に判断し、速やかに治療を開始する。
- 経時的に症状の変化を確認し、重症度を再評価する。
- アナフィラキシーでは、早期のアドレナリンによる治療が死亡率や入院率の改善につながる。
即時型症状の臨床所見と重症度分類
- アナフィラキシーの重症度(グレード)判定は、下記の表を参考として最も高い重症度を示す器官の重症度によって行う。
- 重症度を適切に評価し、各器官の重症度に応じた治療を行う。
症状出現時の薬物療法
- グレード2(中等症)以上の症状には原則として治療介入を考慮する。
- グレード3(重症)の症状に対してはアドレナリン筋肉注射を行う。
- グレード2(中等症)でも①過去の重篤なアナフィラキシーの既往がある場合、②症状の進行が激烈な場合、③循環器症状を認める場合、④呼吸器症状で気管支拡張薬の吸入でも効果がない場合にはアドレナリンの投与を考慮する。
食物アレルギー診療ガイドライン2021 一部改変
- 用語解説
- ヒスタミンH1受容体拮抗薬
- 皮膚症状に有効であるが、アナフィラキシー出現時の第一選択薬ではない。30分〜1時間程度で効果が出る。
- 経口ステロイド薬
- 作用発現までに数時間を要し、二相性アナフィラキシーを予防する可能性があるが、その効果は立証されていない。
- β2刺激薬
- 喘鳴、咳嗽、息切れなどの下気道症状に有効であるが、上気道閉塞(嗄声・喉頭絞扼感等)の症状には無効である。
アナフィラキシー発症時の初期対応
アナフィラキシーに対する注意点
- 症状の進行は早く、アドレナリン投与を含めて迅速な対処行動が要求される。
- 一部の症例には、経過中に二相性反応が見られることがあるため、症状出現後4時間までは医療機関にて経過観察することが望ましい。
- 自施設での対応が困難であれば、入院施設のある医療機関へ搬送することが望ましい。
- 気管支喘息の存在はアナフィラキシーの重篤化の危険因子なのでコントロールを十分に行う。
アドレナリン自己注射薬(エピペン 0.3mg、0.15mg)について
- エピペンは登録医によって処方が可能で、2011年から保険適応となった。
- エピペンの処方が勧められる食物アレルギー患者は下記の通り。
- エピペンはアナフィラキシーの補助治療を目的とした自己注射薬であるため、使用後は直ちに医療機関を受診するよう指導する。
- 保育所および学校等において緊急の場に居合わせた関係者が、エピペンを使用できない状況にある本人の代わりに注射することは医師法違反とはならない。学校におけるアレルギー疾患の取り組みガイドライン(日本学校保健会)保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(厚生労働省)平成25年11月27日 医政医発1127第1号 厚生労働省医政局医事課長通知
- アナフィラキシーショックで生命が危険な状態にある傷病者が、あらかじめエピペンを処方されている場合においては、救命救急士はエピペンを業務として使用することが2009年から可能となった。
- エピペンを使用するタイミングは下表を参考に判断する。
アドレナリン自己注射薬(エピペン)の併用注意に関して
- 抗精神病薬(ブチロフェノン系薬剤、フェノチアジン系薬剤、イミノジベンジル系薬剤、ゾテピン、リスペリドン)とα遮断薬はアドレナリン自己注射薬(エピペン)の「併用注意」の薬剤である。
- これらの薬剤の投与を受けている患者では、アドレナリン自己注射薬(エピペン)を使用した場合に薬理学的に血圧低下が起こる恐れがある。