発症機序からみた特殊病態

花粉-⾷物アレルギー症候群(PFAS)

花粉アレルゲンと果物や野菜など⾷物のアレルゲンが交差反応し、⾷物アレルギー症状を呈する場合がある。主にIgE抗体を介した⼝腔粘膜を主体とする即時型アレルギー症状(OAS)を呈するが、稀に全⾝症状を認める。

PR-10ファミリーではカバノキ科(ハンノキ・シラカンバ など)花粉とバラ科果物(リンゴ、モモ、サクランボ など)・マメ科(⼤⾖・ピーナッツ)が交差反応しやすい。⼀⽅、プロフィリンはイネ科(カモガヤ など)・キク科(ブタクサなど)花粉とウリ科果物(メロン、スイカ など)、キク科(ヨモギ)花粉とセリ科野菜(セロリ、ニンジン など) の交差反応に関与する可能性が報告されている。

ラテックス-フルーツ症候群

ラテックス(天然ゴム)アレルゲンと果物や野菜アレルゲンが交差反応し、アナフィラキシーを含む即時型症状やOASを呈する場合がある。リスクの⾼い⾷品としてアボカド、クリ、バナナ、キウイフルーツがある。

調理業従事者における職業性⾷物アレルギー

調理師や⾷物を扱う業務に従事している⼈は、扱っている⾷物に感作され、⾷物アレルギーを発症することがある。感作ルートは経気道感作と⼿湿疹を介した経⽪感作とがあり得る。

Sano A, et al. Case Rep Dermatol 2015; 7:227-32
Inomata N, et al. Allergol Int 2015; 64:73-8
Minami T, et al. Allergol Int 2018; 67:217-24

化粧品使⽤に関連した⾷物アレルギー

化粧品、ボディクリーム、ヘアケア製品等に含まれる⾷物由来成分や⾷物と交差抗原性を有するタンパク成分に経⽪感作されることにより、⾷物アレルギーを発症することがある。わが国では、加⽔分解⼩⻨を含有していた「(旧)茶のしずく⽯鹸」の使⽤者に⼩⻨アレルギーが発⽣した事例が2011年に社会問題になった。コチニール⾊素によるアレルギー症例も少なくない。

Fukutomi Y, et al. J Allergy Clin Immunol 2011; 127:531-3.e1-3
Yagami A, et al. J Allergy Clin Immunol 2017; 140:879-81.e7

用語解説

交差抗原性共通の構造をしたエピトープが異なるタンパク質に存在し、その両者に特異的IgE抗体が結合すること
交差反応性交差抗原性に起因して症状が誘発されること

略語解説

PFASpollen-food allergy syndrome
PR-10pathogenesis-related protein -10

遅発性IgE依存性⾷物アレルギー

I型アレルギー機序にも関わらず、数時間〜半⽇経過してから蕁⿇疹やアナフィラキシーが出現する。

納⾖アレルギー(PGAアレルギー)

納⾖摂取後に症状が誘発されるが⼤⾖や納⾖菌由来ではなく、納⾖の粘稠物質であるpoly γ-glutamicacid (PGA)が原因抗原とされる。PGAは分⼦量が⼤きいため吸収されにくく、腸管内で緩徐に分解され吸収されるため症状の誘発までに数時間〜半⽇を要すると考えられている。検査はプリックテストを⾏う。発症者にはサーファーなどが多く、海でクラゲにくり返し刺されることでPGAに感作されると報告されている。

Inomata N, et al. Allergol Int 2018; 67:341-6

獣⾁アレルギー(α-galアレルギー)

糖鎖であるgalactose-α-1,3-galactose (α-gal)が原因抗原として関与する場合、⽜⾁を中⼼に α-galを豊富に含むウシやブタなどの四つ⾜の哺乳類の⾁を摂取した数時間〜半⽇後に症状が誘発される 1)2)3)。唾液成分に α-galを含むマダニ咬傷により感作されることで体内に α-galを認識する特異的IgE抗体が産⽣される。さらには抗がん剤のセツキシマブもマウス由来のFab領域に糖鎖 α-galを有するため、投与後に症状が誘発されることが報告されている 4)。検査は保険適⽤外であるが、 α-gal特異的IgE抗体が診断に有⽤である。

1)千貫祐⼦他.⽇⽪会誌 2013; 123: 1807-14
2) Commins SP, et al. J Allergy Clin Immunol 2011; 127: 1286-93
3) Hamsten C, et al. Allergy 2012; 68: 549-52
4) Chung CH, et al. N Eng J Med 2008; 358: 1109-17

その他の獣⾁アレルギー(アルブミンアレルギー)

ペット等の⾎清アルブミンに感作され、獣⾁アレルギーを発症することがある。pork-catsyndromeでは、ネコ⾎清アルブミンであるFel d 2に感作されることにより、豚・⽜・⽺等の⾁類摂取によりアレルギー反応を起こす 1)。特に豚⾁摂取30〜45分後に症状が出現するとされる。問診では、ネコの飼育歴やネコとの接触歴を聴取する。保険適⽤の検査では、豚⾁とネコ上⽪特異的IgE抗体が測定でき、ある程度診断を推測できる。保険適⽤外の検査ではブタ⾎清アルブミン(Sus s1)とネコ⾎清アルブミン(Fel d 2)の特異的IgE抗体が診断に有⽤である。また類似の疾患としてbird-eggsyndromeがあり、⻑期に⿃を飼育していた⼈が、⽻⽑や糞などに含まれる⾎清アルブミン(Gal d 5)に経気道的に感作し、鶏⾁や卵摂取により症状が出現する症例も報告さ
れている 2)。

1) Abreu C, et al. Clin Transl Allergy 2015; 5(Suppl 3): P164
2) Hemmer W, et al. Allergo J Int 2016; 25: 68–75